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文明の発展がもたらす人間の“愚” エレファントマンはその小さな視界から何を見たのか?

商店街のブログを名乗りながら、2回目の記事で映画を取り上げることになるとは・・・。

人間とは何か?人間性って?

こんな重いテーマを考えさせられる映画を見た。ツインピークスマルホランド・ドライブで有名なデヴィッド・リンチが1980年に制作した「エレファント・マン」だ。19世紀に実在したジョゼフ・メリック(映画ではジョン・メリック)の半生を描いたものである。
主人公のジョン・メリック(ジョン・ハート)は、生まれつき重度の奇形で醜悪な外見を持Photo_8 ち、見世物小屋で「エレファント・マン」として公開されていた。公立ロンドン病院の外科医トリーブス(アンソニー・ホプキンス)は、見世物小屋の親方バイツからジョンを引き取り、研究も兼ね病室で面倒を見ることにする。
これで、やっと人間らしい生活を取り戻すかに見えたが・・・・。病院の警備員であるジムにその存在を気付かれる。ジムは夜な夜なジョンの病室に押し入り、卑劣な行為を繰り返す。パブで飲んだ後、そこの酔っ払いや娼婦を伴って押し入る。はじめてジョンを見た娼婦は悲鳴を上げるが、ジョンもまたそんな訪問者に恐怖の表情を示す。挙句に、ジムはジョンに手鏡で自身の姿を見せ、ジョンは・・・・。

小さな穴から見た人間の“影”

これ以上は実際の映画を見てもらいたいのだが、ジョンはその外見以外は、普通の人間と何ら変わらない。
では、普通の人間って?普通じゃない人間って?他の動物とは何が違うのか?
人間はその長い歴史の中で、言語を習得し、農耕生活を開始し、文明を発展させてきた。特に、ジョンが育った19世紀は産業革命を経て、急速に工業化・産業化が進展してPhoto_9 いた。社会環境や生活習慣、労働観念が大きく変わり、文明が著しく“発展”した象徴的な時代だ。表向きには人間は豊かな生活を手に入れたが、それに比例して人間に巣くってきた負の側面がある。ジョンは、その風貌を隠すために頭に大きな袋かぶり、目の部分に視界取りのために小さな穴をあけている。この映画は、その穴から見える人間の行い、人間が持つ影の部分にスポットライトを当て、ジョンが見た世界として描かれている。まさに、人間の愚かさを、視野の狭い世界として表現している。
人間は動物の間には、こうした言語や文明を築いたことだけでなく、大きな違いがある。「寝方」である。樹上世界から地上の世界に降りた人間は、進化の過程で「横になって寝る」ことを手に入れたが、本映画の本質としても取り上げられている。

人間とは何か?認識が生み出す愚行

ジョンの外見と病気による障害は、確かに際立っている。「確かに際立っている」ことを認識できるから差別が生まれる。少数民族が迫害を受けるのと似たような構図だ。「ある民族が、自分たちより少数だ」ということが認識できるから迫害の芽が生まれる。
普通の人間を定義しているのは、この認識だろう。文明の進歩、医学の発展に伴い、この認識から外れる人間・民族に接触する機会が増える。それが差別・迫害といった愚行を生み出す。戦争も同様だ。Photo_10
この前、帚木蓬生(ははきぎ・ほうせい)の「逃亡」を読んだ。戦犯として追われる主人公 は、憲兵として中国大陸にいた時の“戦争という口実の元に犯した蛮行”を振り返り、考察をしていく。この中で、「中国大陸には人間と家畜の間に、もう1つ動物がいる」という表現が出てくるが、これも「日本人の方が国力・民度が上である」という認識から生まれた発想だろう。しかし主人公は、「大陸にいた農民は、内地(日本)の農民と何も変わらない」と述懐している。
人間とは何かと定義すること自体が間違っている。それが認識を生み出す。紛れもなく、ジョン・メリックは「象でもなく、動物でもなく、1人の人間」なのだから。



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