砂町銀座「魚勝」に見る商店街の「三ツ星商店」とブランド戦略
砂町銀座に行ってきた。十条銀座、荏原銀座と並び、東京3大銀座の1つといわれる江東区の商店街。以前から行こうと思っていたのだが、駅から遠いという理由で、何となく足が遠のいていた。
最寄駅としては、亀戸(JR総武線)、西大島(都営新宿線)、南砂町(東西線)などがあるが、いずれも駅からバスに乗る必要がある。その分、バスの種類は多く、錦糸町や両国、葛西などからもアクセスが可能だ。今回は、行きは西大島、帰りは両国を使った。
砂町銀座は、明治通りから丸八通りまでの670メートルに、180軒ほどの店がひしめく商店街。道幅は、3~5メートルほど。歴史的に昭和40年代半ばまで町工場や零細企業が多かったところで、その住民たちの相手の商店街として発展してきた。安い食料品や洋品、惣菜屋さんなどが軒を連ね、代表的な下町の商店街として、商店街ファンの間では有名な商店街である。毎月10日にはバカ値市が開かれる。
西大島からA4出口を出てすぐ左側にあるバス停からバスに乗り、約4分(バス停は3つ先)で、砂町銀座の入口に到着(トップの写真)。と同時に、ものすごい人の行列が伊右衛門家を迎えてくれた。魚の切り身や干物、野菜を激安で販売する「魚勝」。野菜売り場と魚(干物)の売り場の2方向にできた行列だけでなく、店の脇には鮭の切り身専門に販売する行列が。トップの写真の左に見える人だかりが「魚勝」の行列。
行列のできる“三ツ星”魚屋
魚勝は、砂町銀座を代表する魚屋さんで、商店街の入口の店舗のほかに、入口から100メートルほど入ったところに鮮魚専門の店舗がある(こっちが本家)。砂町銀座一の行列店として知られ、鮮度の高さと値段の安さが自慢。一般客に混じり飲食業者もこっそり並んでいるという情報もあり、ミシュランガイドの商店街版があれば、三ツ星間違いない鮮魚店でしょう。
営業時間は12時から16時までで、売切次第終了。到着したの12時過ぎだったが、その時点で店内は満員。行列は、50人ほど。早速、列に並ぶこと10分程度。中に入ると、魚の切り身や刺身の柵、かにや貝類、干物などが多数並んでいました。
この日のオススメは毛がに!!生きた毛がにが一杯980円。これは安い!入口にいた店員のおじさんが声を張り上げて、「この毛がには安いよ。他だったら1匹5000円はするのが、980円。買わなきゃ損だよ」と絶叫。
あと、他の店員がカレイが運んできたら、「このカレイも、他では絶対に手に入らないよ!魚勝でも年に数回手に入るか入らないかの代物だよ。ここにあるだけだから、早く持っていって!」と言ったら、みんな続々と買い物カゴへ。あっという間に、カレイが売切。
品質の良さと「安心」を売り込む魚勝のブランド戦略
この営業トークはうまいなぁと思いました。魚勝という鮮魚店としてのブランドを使いながら、魚の魅力、値段の安さを売り込む。買い物客も、「魚勝の魚なら」という安心感もあるし、これまでの長い歴史で信頼関係が築かれているのでしょう。
本当にこのカレイが珍しいのか、毛がにが安いのか、疑い出したらキリがないのですが、この人込みと営業トークの勢いプラス信頼感が加わったら買いたくなるのが人情というものでしょう。「食の安心・安全」の注目が高まる中、食品検査などを通じて「安全」を科学的に立証することができても、人の心や印象に左右される「安心」については、科学的な裏付けだけでは消費者は満足しないといいます。こうした捉えどころのない「安心」を1つの売りにして、ファンを増やしているのが高級ブランドですが、魚勝の商売もこれを似たような側面があると思いました。日本の老舗や商店街の長老的なお店は「ブランド」より「暖簾(のれん)」という言葉のほうがピッタリくる感じがしますが、いずれも品質の良さと長年の信頼関係による安心感によって支えられていることは間違いありません。
もちろん、砂町銀座という「地(商店街)の利」も見逃せません。ルイ・ヴィトンが銀座や新宿などにブティックを構え、ブランド力を演出しているように、鮮魚店もそれにふさわしい“場”が必要であることは言うまでもありません。
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